戦略コンサルタントの備忘録

新卒でコンサルファームに入社した戦略コンサルタントの備忘録。コンサルキャリアを考える材料をシェアすることが目的です。

コンサルファームが規模を拡大する理由

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サービス品質が"人"に大きく依存するコンサルファーム。
高度なプロフェッショナルサービスを提供できる人材は一朝一夕には育たないため、長らくコンサルファームは少数精鋭とされていました。

ところがここ2-3年を見ると、人を取りまくっています。
もうこれは正気の沙汰じゃない。

今回、ファームを卒業するにあたり数人のパートナーとカジュアルに飲みに行く機会があり、ファームの規模拡大理由に対する僕なりの仮説をぶつけ、パートナーたちの考えを聞くことができたので、メモしておきたいと思います。

①分散投資によるリスクヘッジ

①-1. 業種分散

株式投資の世界にはオフェンシブ銘柄・ディフェンシブ銘柄というカテゴライズがあります。

前者は景気変動に業績が左右されやすく、景気上昇局面ではより多くの利益を、後退局面ではより少ない利益を享受することになります。

一方の後者は景気変動に大きな影響を受けず、安定的に利益を享受します。

前者は自動車やエネルギー産業、後者は食品やヘルスケア産業などが該当します。

株式投資では、これらの銘柄をバランスよくポートフォリオに組入れることが、安定的にリターンを享受する上で重要と言われています。

ファームの経営目線でもそれは同じで、クライアントポートフォリオをバランスよく構成させていることが重要だそうです。

ヘルスケアなどで安定的に案件を受注しながら、景気上昇局面で自動車などからより多くの案件を受注すると。

仮にヘルスケアに傾注していれば、安定はしても景気上昇局面では、どうしても他ファームに業績面で大きく劣後してしまう。

逆に自動車に傾注すれば、景気上昇局面ではいい気分を味わえても、後退局面では最悪のケースとしてリストラも有力な選択肢となってしまいます。

 

①-2. 企業分散

また、特定企業という目線で見ると、急激な業績悪化により、ファームのほとんどの受注が吹き飛ぶというリスクがあります。

たしかに、近年だとコンサルファームが顧客とする大企業であるシャープや東芝、タカタなどが経営危機に直面しておりました。

某ファームはある特定の企業に大きく傾注しており、その企業の経営が大きく傾いた際にファーム内が相当揺れていたという噂を聞いたことがあります。

業種分散にしろ、企業分散にしろ、肝心な分散投資を行うには、ある程度の元本を要します。

もはや説明の必要はないと思いますが、人が稼働してナンボのビジネスであるコンサルティングは、一人の人が複数案件を捌くことが難しく、結果として規模を拡大する必要が生じるということだそうです。

②ニーズ対応のための張り付け

これまで何度か書いていますが、純粋な戦略案件というものの需要は、もうほとんどなくなってきていると思います。

クライアントが求めているのは、綺麗な戦略ではなく、あくまで利益の最大化。

そうなると、クライアントの利益にどこまでコミットできるか、或いはどこまでサポートできるか、というのが各ファームの差別化要因になってくると思います。

 

利益の最大化に向けては、社内をどう動かしていくかという視点も非常に重要になってきます。

社内の力学を正確に理解していくには、ある程度特定の企業に入り込んで行く必要があります。

ですが、前述の通り、分散投資をしていかないといけない。

その結果、どうしても人をたくさん採って、クライアントに張り付けなければいけなくなるわけです。

実際に、従来から人の張り付けを行ってきた総合ファームが、戦略ファームの領域を侵している(戦略ファームからシェアを奪っている)という動向があるようです。

総合ファームはその成功体験から益々人を増やし、戦略ファームは総合ファームの進行に対抗するために人を増やすという流れがあるようです。